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短くてもピリリ 才能発掘の20年 ショートショートフィルムフェス 来月4日開幕 

放送芸能

2018年5月27日 朝刊

一部イベントを除いて上映は無料。事前申し込みは映画祭オフィシャルサイトから。当日券あり。問い合わせは実行委員会=(電)03(5474)8844=へ。

 アジア最大級の短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」が二十周年を迎えた。今年は六月四〜二十四日、表参道ヒルズ(東京都渋谷区)など都内八会場で開催。今年から「スター・ウォーズ」シリーズの巨匠ジョージ・ルーカス監督の名を冠した「ジョージ・ルーカス・アワード」を創設、最高賞のグランプリに贈られる。これまで数々の才能を発掘してきた短編映画の魅力とは。 (猪飼なつみ)

 映画祭は一九九九年、俳優の別所哲也さん(52)が始めた。当初は別所さんが米国で集めた約三十点を上映。ルーカス監督の初期の短編「THX 1138 4EB」(現邦題「エレクトロニック・ラビリンス」)は日本初公開だった。二〇〇二年からは公募した世界各地の作品を上映。〇四年に米アカデミー賞公認となり、グランプリが同賞短編部門の選考対象になると、認知度が上がって応募が急増した。

 短編の長さに規定はないが、十〜二十分の作品が多い。メインのコンペティションには日本、アジア、インターナショナルの三部門があり、監督や言語、撮影場所などで実行委員会が各部門に分類。俳優や映画監督など五人の審査でそれぞれ優秀賞を選び、その中からグランプリ一作品が決まる。

 映画祭の特徴と短編の魅力について、広報の高橋秀幸さん(35)は「一つのメッセージに絞って作り手の熱量が凝縮され、骨太な作品になる。心揺さぶられるものが多い」と語る。

 例えば、一六年グランプリの「合唱」(クリストフ・デアーク監督)は、不公平に抗議するメッセージが込められた。ハンガリーの小学校が舞台で、合唱の歌唱力が低いとみなされた少女は教師から口パクを強制される。コンクール当日、全員が口パクで抵抗する。

 また、社会情勢を反映した作品が多いのも特徴だ。北京五輪が開催された〇八年のグランプリは鈴木勉監督の「胡同の一日」。再開発で立ち退きを強いられた北京の人々の胸の内を描いた。東日本大震災があった一一年は「絆を感じさせる作品が多かった」(高橋さん)という。

 「短編映画祭は若手監督の登竜門」と語るのは、一二年に「もう一回」でグランプリを受賞した平柳敦子監督(42)。昨年のカンヌ国際映画祭に出品され、日本でも公開中の「オー・ルーシー!」で長編デビューを果たした。

 平柳監督は「この映画祭で初めて評価された。短編は自分のビジョンやスタイルを伝える名刺代わりのようなもので、言葉で語るより分かってもらえる。グランプリをもらったおかげで、次へのチャンスが広がった」と振り返る。

 今年は百三十カ国・地域から一万本以上の応募があり、約二百五十本を上映する。ノンフィクション、VR(仮想現実)、学生の三部門を新設。ノンフィクション部門では、米アカデミー賞でメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘さん(49)を追った「ヒューマン・フェイス」(アライン・ピメンテル監督)などが上映される。

◆別所哲也さん 魅力を語る

 映画祭の代表で、俳優の別所哲也さんは短編の魅力を「映画の世界を広げてくれた」と語る。自ら映画祭を開くほど短編映画に夢中になった二十年だった。

−きっかけは?

 最初は先入観があって、短編は学生が作る実験的なものだろうと思っていた。でも、一九九七年に初めて米国の短編映画祭に行くと、非常に面白くて衝撃的でした。監督のスタイルが見え、時代を敏感に反映している。どうして長編でなければと思っていたのか。すぐに日本でも短編映画祭をやりたいと思いました。

−第一回でルーカス監督の作品を上映した。

 僕にとっては映画の神様。監督が学生のときに作った短編に、すでにSFの片りんがあった。何のコネもなかったけれど、日本での上映をお願いしたら許可してくれた。九九年にお会いすると、巨匠となった監督が「短編を作ったときから、ずっと冒険を続けている」と言っていたのが印象的です。それ以降も交流があり、賞に名前を使わせてもらえることになった。

−二十年の変化は?

 この映画祭から出た監督たちが世界で活躍しているのはとてもうれしいです。それに、お客さんにも短編映画が浸透してきた。「もっと見たい」という声が高まり、監督からも「他にも作品がある」と言われる。横浜市で短編の映画館を十年間経営しました。昨年末に閉館しましたが、今はオンラインでやっています。

−今後の映画祭は?

 もっと柔軟に進化していくと思う。地域とのつながりを持ったり、オンラインで展開したり。短編は時代を映すから、映画祭も時代に敏感でいたいです。

 

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