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信条通りに生きていますか 「ザ・スクエア 思いやりの聖域」28日公開

放送芸能

2018年4月26日 朝刊

 昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」が二十八日、公開される。現代アートを題材に、モラルの前で葛藤する人間の本性を皮肉とユーモアたっぷりに描いた。スウェーデン出身のリューベン・オストルンド監督(44)は「自分自身が信条通りに生きているかを見つめ直し、観客にも問いかけたかった」と話す。 (猪飼なつみ)

 本作の原案は、監督が友人の大学教授と二〇一五年にスウェーデン南部の町、ベーナムで行ったアートプロジェクトに始まる。広場に設けた正方形(スクエア)の枠内では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という参加型アートで、例えば誰かが枠内で助けを求めたら、通りかかった人は助ける義務があるというものだ。

 オストルンド監督は「大きな商業施設の中で、子どもが子どもを恐喝して金を奪う事件がスウェーデンであったのですが、周りにいた大人は誰も助けようとしなかった。世の中は二十年前と比べて、ますます不公平になり、個人ができることも限られていると思った。僕自身、罪悪感にさいなまれていた」と明かす。

 映画では、アートプロジェクト「ザ・スクエア」を企画する美術館のキュレーター(作品収集・企画の専門職員)を主人公にした。自らの言動で次第に追い詰められていく主人公に、監督は自らの姿を投影した。「僕もスクエアに象徴される人道的な価値を信じているけど、それに基づく行動ができているのか、いつもジレンマに陥る。だから僕自身を攻撃したかった」

 劇中で、助けを求める女性がいても素通りする通行人や物乞いを無視する人たちがたびたび登場するが、これらのエピソードは実際に監督自身や友人に起こったことだという。

 メディアのあり方も皮肉る。劇中に出てくるPR会社は展覧会の高尚な理念をそのまま宣伝しても目立たないと考え、わざとインターネット上で炎上させる動画を作成。メディアは批判するが、結果的に展覧会の話題は広まっていく。

 監督は「ジャーナリストの友人に聞くと、競争が激しくてどうしてもセンセーショナルな記事になってしまうという。それはまるでメディアそのものへの風刺のように見える」と危惧する。「一つの映画を見て、これが世界のすべてと思ってはいけないけど、これは風刺。日本の方にも何か考えてもらえれば」と話す。

<あらすじ> 現代美術館のキュレーターのクリスティアン(クレス・バング)は次の展覧会で、正方形の枠を地面に描いた作品「ザ・スクエア」を企画する。すべての人に平等な権利と義務を与えるという枠は人道的な聖域を意味し、格差社会や蔓延(まんえん)するエゴイズムに一石を投じる狙いがあった。しかし、携帯電話と財布を盗まれたクリスティアンは、その理念に反する言動で次第に追い詰められていく。

 

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