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探偵!ナイトスクープ アホバカ全力30周年

放送芸能

2018年3月25日 朝刊

 視聴者の悩みや疑問に徹底的にこたえる関西ローカルのバラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」(金曜午後11時17分)が、根強い人気を誇っている。大阪の朝日放送が制作し、今月で放送開始30周年を迎えた長寿番組だが、その人気は関西だけでなく、全国の独立局を通してジワジワと浸透。ライバル局も番組づくりの参考にするなど、その「視聴者ファースト」の姿勢はテレビ離れに苦しむ業界からも熱い注目を集めている。 (砂上麻子)

 タキシードやカクテルドレス、民族衣装で“盛装”したノリノリの男女が詰めかけた大阪国際会議場メインホール。「ナイトスクープ」三十周年特番の収録は、抽選で選ばれた約二千五百人の熱気で異様な盛り上がりを見せた。

 三十年間に寄せられた調査依頼は約五千件。その中から選ばれた「傑作映像ベスト10」に、ファンの拍手と笑いが起きる。番組のファンというビートたけしさん(71)や黒柳徹子さん(84)もビデオメッセージを贈ってきた。「すばらしい番組です。押しつけがましくない、上手な番組の作り方をしている」。黒柳さんの言葉に、会場も深くうなずいた。

 番組が始まったのは一九八八年三月五日。芸人や俳優が「探偵」となり、視聴者の依頼を受け調査する。初回のネタは、八五年に阪神タイガースが優勝した時、大阪の道頓堀川に投げ込まれたカーネル・サンダース像の捜索だった。

 「母乳でお菓子を作りたい」「恋したマネキンと結婚したい」など、ちょっと変で、ささやかな依頼を番組は全力で解決してきた。九八年五月一日には、番組史上最高の平均視聴率32・2%(関西地区、ビデオリサーチ調べ)を記録している。

 「探偵局」の初代局長を務めたのは、二〇〇〇年に芸能界を引退した上岡龍太郎さん(76)。探偵の報告に「つまらん」「やり直し」など、時に厳しく突っ込み、探偵を震え上がらせた。今も伝説として語り継がれる「全国アホ・バカ分布図」は、上岡さんの駄目出しから生まれた。

 〇一年一月に上岡さんからバトンを継いだのは俳優の西田敏行さん(70)。視聴者の依頼に感動し、涙を流す西田さんの姿は、もはや番組の名物ともいえる。「上岡局長は大人で乾いた笑いを追求していた感じがする。例えるならバスター・キートン(一九二〇年代に活躍した米国の喜劇俳優)。僕の場合は、ちょっとチャプリンになっちゃったかな。芸人さんは人前で泣くのは恥ずかしいでしょうけど、僕の場合はその垣根がないから」と笑う。

 西田さんは番組の魅力を「人間はアホやねぇ、おっちょこちょいやねぇ、バカやねぇ。でも、いとおしいねぇ…みたいな気持ちが全部詰まっている」と語る。

 奈良井正巳プロデューサー(49)は「依頼はホームランもあれば、三振もあるが、どの依頼にも真面目に向き合ってきた」と長寿の理由を説明。「最近は『別れた家族に会いたい』といった依頼が増えており、家族のあり方の変化を感じる。そうした難しい問題にも寄り添っていけば、これからも番組は新しくなる」と力強く語る。

◆竹山探偵 魅力ずばり

 お笑いタレントのカンニング竹山さん(46)は二〇〇五年九月、探偵局に“入局”した。ただし、番組では本名の「竹山隆範」。関西流の番組づくりに当初は悩み、辞任も考えたというが、今や伝統の一翼を担う。

 最初はタレント四人ぐらいで「お試し探偵」として出演し、選ばれました。後でどうして僕なんですか?と尋ねたら「苦情が一番多かった。支持がないということは、今からいろんな見せ方が視聴者にできるってことだ」と言われ、すごい番組だなと。スタッフから「キレて笑いを取る必要はない。感動したら泣き、怒りたかったら怒ってもいい。依頼者と同じ気持ちになれ。カンニング竹山はいらない、竹山隆範でやれ」と言われ、本名で出演することになりました。

 でも最初は辞めたくて仕方なかった。ロケに行っても面白いVTRが撮れない。言われた通りにやる東京のテレビとの違いに三年ぐらい悩みました。そんな時、先輩探偵だった北野誠さんから「大丈夫、できてる」と励まされ、だんだん面白くなりました。

 スタッフは依頼者のことを本気で考えている。いい思い出を作ってあげたいとか、だめなところがあれば本気で怒ったりする。VTRも大げさな仕掛けがあるわけではないが、依頼者の個性を引き出すことで、視聴者をどんどん番組に引き込んでいく。

 ナイトスクープは関西の誇り。全国的に知られるようになり、ロケでも「ナイトスクープ?」と協力してくれる。探偵や時代が変わっても残っていくと思う。

◆テレビの力 存分に

 「探偵!−」の名を一躍全国に知らしめた「アホ・バカ分布図」誕生の裏側には「テレビの力があった」と初代プロデューサーの松本修さん(68)は振り返る。

 「アホとバカの境界線はどこにあるのか」との依頼は1990年1月20日の放送で取り上げられた。担当したタレントの北野誠さん(59)が東京駅から新幹線で移動しながら調査に着手したが、名古屋市で「タワケ」に遭遇。「アホ」と「タワケ」の境界を探り、岐阜県関ケ原町が「アホ」の境界線と結論づけた。

 ところが、当時の上岡局長は「で、バカとタワケの境界線は?」と疑問を口にし「きちんと地図に境界線を入れてください」と調査継続を命令。その後、全国の教育委員会に大規模なアンケートを実施したほか、視聴者からも情報が寄せられ「アホ」や「バカ」といった言葉が関西を中心に同心円状に広がっていることを突き止めた。

 「分布図の完成」編は91年5月に放送。番組は日本民間放送連盟賞テレビ娯楽部門最優秀賞、ATP(全日本テレビ番組製作社連盟)賞グランプリなどを受賞した。松本さんは「地方出身の人が故郷を空白にしておきたくない一心から地元の言葉を手紙やはがきで送ってくれた」と感謝する。

◆首都圏では

 番組は東京MXテレビ(日曜午後5時)、テレビ神奈川(木曜午後8時)、テレビ埼玉(月曜午後8時)、とちぎテレビ(火曜午後10時)、静岡朝日テレビ(水曜深夜0時55分)でも放送中。

 

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