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東日本大震災から7年 笑いの花は咲く みちのく唯一の定席 来月開場

放送芸能

2018年3月11日 朝刊

 「3.11」から7年、希望の笑いを東北に−。地元芸人や落語芸術協会(芸協)の面々が掲げた悲願が4月、仙台市内で結実する。東北で唯一の常設寄席「魅知国(みちのく)定席花座」が開場。毎日、落語や漫才、マジックで笑いを届ける。東日本大震災の被害に今も苦しむ人たちに「笑いのパワーを365日欠かさず発信する」と意気込む。「笑い不毛の地」と言われてきた東北の地に、笑いの花は咲き続けるか。 (猪飼なつみ)

◆復興の力に! 元気の素に!! 支える芸協・小遊三の思い

 仙台はじめ被災地で、たびたび落語会を開いている芸協副会長の三遊亭小遊三さん(71)に「花座」に携わっていく思い、被災地と笑いについて聞いた。 (聞き手・神野栄子)

−震災後、被災地を回っての落語会で感じたことは?

 震災の年に岩手、宮城、福島のホールなどで公演した。こっちはどういう状況でも同じようにやります。お客さまも被災後の大変な状況とは違った空間を楽しんで、落語を聴いて笑ってくれた。気分転換して帰ってもらえたと思う。ぼくらもやりがいを感じて励みになった。

−仙台寄席は?

 12年4月に初めて出た。六華亭遊花さんが三遊亭遊三師匠から名前をもらってお披露目した時だった。遊花さん目当てのお客でいっぱい。こりゃ集客には困らないなあと思った。

−最近のお客さんの様子は?

 東北のお客さまは積極的で熱心。参加しようという意欲にあふれ、前向きなのでやりやすい。お年寄りが多かったが、このごろは子どもさんも目立つ。明るくなった感じがする。

−もうすぐ花座がオープンする。芸協としてはどう支える?

 寄席が根付くように、労を惜しまず、地に足着けて地道に努めます。芸協メンバーほぼ全員が「出たい」と言っている。自分もそうだったが、地方に行くと、いつもと違ったやる気が出てエネルギッシュになる。まあ、うち(芸協)としたら、花座の出演をきっかけに人気と実力のある芸人が育ってほしい。笑いで復興の力になりたいし、元気の素(もと)になれたらという思いは変わりません。

◆東北弁の看板娘 

 二月上旬、仙台市中心部の映画館で、スクリーン前の奥行きわずか二メートルの特設高座で「魅知国(みちのく)仙台寄席」が開かれた。ここを拠点に活躍する六華亭遊花(ろっかていゆうか)さん(51)が東北弁にアレンジした古典落語「鬼の面」を披露すると、満席の約百五十人で埋まった会場はひときわ大きな笑いに包まれた。

 仙台寄席は、二〇一〇年六月から毎月開催されてきた。地元でイベント会社を営む白津守康さん(56)が街づくりの一環として、もともと好きだった寄席を、デパートのフードコートに即席の高座を設けて始めた。東北が「陸奥(みちのく)」と呼ばれたことにちなみ、名前に「魅力あふれる国・東北をもっと知ってほしい」と願いを込めた。遊花さんら地元芸人が出演したが、観客は二十人ほどだった。

 地元のテレビやラジオでリポーターなどとして活躍し、既に人気者だった遊花さんは、一九九七年に東北弁を操る芸人でつくる「東方落語」に入門。「川野目亭南天」と名乗り、独創的な東北弁落語に取り組んだ。コンプレックスに感じる人も多い方言を「豊かな言葉だと思ってほしい」と話芸に生かす。「お客さんはだんだん声を上げて笑ってくれるようになった」。やがて“看板芸人”として売れっ子になった。

 寄席が軌道に乗り始めた時に起きた大震災。「寄席どころではない」と白津さんはあきらめかけたが、避難所にいるという匿名の人から「四月の寄席はありますか」と電話がかかってきたという。「一人でも望む人がいるなら」と急きょ別の飲食店で開催。芸協の三遊亭遊馬さん(47)と春風亭柳之助さん(51)も東京からバスで駆けつけた。約五十人の客は大笑いして、つかの間の憩いの場となった。

 一〇年から寄席にレギュラー出演していた遊花さんは「こんな時だからこそ、笑いが必要なんだ」と実感。一二年には芸協の三遊亭遊三さん(80)に弟子入りし、東北六県に華を咲かせるとの願いを込めて「六華亭−」に改名した。

 仙台寄席はその後、映画館に場所を移し、一度も休まずに開催。なじみ客も増え「回数を増やして」との要望が相次ぎ、白津さんは持ちビルを改装し常設寄席の開設を決めた。

 仙台市歴史民俗資料館によると、明治−大正期には複数の寄席があったが、その後、姿を消したという。いつしか「笑い不毛の地」と称されるようになったが、今回は違う。一一年に白津さんが芸協の仙台事務所長になり、芸協も仙台寄席を支援し、定席のノウハウを伝えた。白津さんが席亭を務める花座には、芸協の桂歌丸会長(81)が「名誉館長」に就くことになっている。

 仙台寄席は四月から花座で開かれる。福島県相馬市から毎月訪れてきた岡田昌博さん(73)は「月に何度も通いたい」と話し、仙台市内の女性(85)は「これから買い物帰りでも見に来られる」と心待ちにする。

 白津さんは目を輝かせる。「もう不毛の地とは言わせない。笑いの力で毎日、東北を元気づけたい」

◆4・1から記念公演

 花座は、仙台市青葉区一番町の繁華街にオープンする。客席は約四十席で、遊花さんのほか、漫才コンビ「ストロングスタイル」、マジックのマジックジェミーさんら東北出身の芸人が中心となって高座をつとめる。毎月一〜五日、二十一〜二十五日は東京から芸協の落語家たちが出演する。

 四月一〜五日の開場記念公演には、三遊亭小遊三さんらが出演。各日千件以上の応募があり満席。問い合わせは花座=(電)022・796・0873(平日午前十時〜午後五時)。

 

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