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隠れた魅力を探して30回 東京国際映画祭 25日開幕

放送芸能

2017年10月22日 朝刊

 日本の映画文化を盛り上げようと1985年に始まった東京国際映画祭(TIFF)が今年で30回の節目を迎える。アジア最大級の映画祭として、今年もコンペティション部門には88の国・地域から1538作品の応募があったが、カンヌやベネチアと比べると知名度はいまひとつ。映画ファンでもなかなか知ることのないTIFFの実態や功績、課題を見つめてみた。 (猪飼なつみ)

 TIFFは当初、隔年で開催、九一年から毎年開催となった。世界の映画・テレビ製作産業を統括する「国際映画製作者連盟」から公認された十五の映画祭の一つで、世界初公開またはアジア初となる作品も数多く上映されている。

 過去のコンペティション部門には、その後、世界的に有名となる監督も出品。第十三回大会(二〇〇〇年)のグランプリ作品「アモーレス・ペロス」で長編デビューしたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で一五年の米アカデミー賞を受賞。第二十四回大会(一一年)グランプリの「最強のふたり」(エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督)はその後、フランスや日本で大ヒットした。

 同部門への応募は、第一回が四十カ国・地域から五百十九作品(当時はヤングシネマ・コンペティション部門)だったが、国・地域数で二倍、作品数で三倍近くまで増えた。このうち十五作品が期間中に上映される。

 同部門のプログラミング・ディレクターを務める矢田部吉彦さん(51)は「有名監督の世界初公開がもっと集まる環境にしたいが、欧米の監督にとってはカンヌやベネチアが目標」と、現実の厳しさを認める。

 「東京」の知名度がなかなか上がらない現状について、映画産業に詳しい城西国際大の掛尾良夫教授(67)は「受賞者の次回作を資金面で支援するなどしないと難しい」と指摘する。

 一方、年々存在感を増す中国・上海や韓国・釜山などアジアのライバルも無視できない。既存の映画館を会場とするTIFFに対し、釜山は専用会場を設け、街が一体となって盛り上がる。釜山やカンヌは国などが開催費の約九割を負担しているが、TIFFは六割ほどにとどまる。

 映画を見る習慣の違いもある。フランス、北米、韓国の人が昨年一年間に映画館へ行った回数は三・五〜四・三回。これに対し日本は一・四回で、掛尾教授は「日本はチケットが高く、映画を見ない若者が増えている」と説明する。

 TIFFは若者の観客を増やすため、六年前から学生の当日券を五百円に。一般チケット千三百〜千八百円に比べ、手ごろだ。矢田部さんは「会場を見ると、若者が増えてきて心強い」と話す。

 掛尾教授は「日本の独自色を出すために、アニメ作品の発掘や関連イベントに力を入れるのも一つ」と提案。矢田部さんは「カンヌやベルリンをまねて芸術色を強めると、幅広いお客さんは来てくれない。エンターテインメント作品もバランス良くそろえ、裾野を広げたい」と話していた。

◆世界初公開など200作品を上映

 今年の東京国際映画祭は二十五日〜十一月三日、東京・六本木を主会場に開催される。(1)Expansive(映画を見る喜びの共有)(2)Empowering(映画人の交流促進)(3)Enlightening(映画の未来の開拓)をビジョンに掲げ、コンペティション部門やアジアの新鋭監督に注目した「アジアの未来」部門など、約二百作品が上映される。

 コンペティション部門の十五作品のうち八作品が世界初公開。日本からは瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督の「最低。」と、大九(おおく)明子監督の「勝手にふるえてろ」が出品される。矢田部吉彦プログラミング・ディレクターは「社会状況というより、個人の生き方を見つめた作品が多い」と話す。

 「アジアの未来」では十作品のうち世界初公開は八作品。日本からは「僕の帰る場所」(藤元明緒監督)が参戦する。部門担当の石坂健治プログラミング・ディレクターは「新しいアジアの映画を発見してください」と意気込む。

 特別招待作品では、今年のベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」や話題の「スリー・ビルボード」など十八作品が上映される。

 日本の今を概観する「ジャパン・ナウ」では、蒼井優、安藤サクラ、満島ひかり、宮崎あおいの四人を特集。野外の六本木ヒルズアリーナでは「タイタニック」や「アルゴ」など、過去の出品作から二十八作品が無料上映される。

 上映時間などの詳細は公式ホームページで。チケットに関する問い合わせはインフォメーションセンター=(電)050・3786・5444(平日正午〜午後六時)。 (深井道雄)

 

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