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会いたかったよヤマトの諸君 70年代少年たちがリメーク「2202」第三章 来月公開

放送芸能

2017年9月24日 朝刊

 ヤマト、復活!! 1970年代に大ヒットしたアニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズがリメークされ、往年のファンを喜ばせている。日本アニメ史上に残る名作だったが、80年代の続編ではストーリーが混迷し、人気も下降、いつか忘れられたコンテンツとなっていた。今回リメークに当たっては脚本に「亡国のイージス」「終戦のローレライ」の小説家福井晴敏さん(48)を起用。大ヒットから約40年、当時の少年たちの熱い思いがヤマトをよみがえらせた。(猪飼なつみ)

 「宇宙戦艦ヤマト」がテレビで初放映されたのは74年。異星人の攻撃で放射能汚染された地球を救うため、ヤマトで遠く離れた惑星を目指す主人公・古代進らの姿が描かれた。当時としては斬新な設定が人気となり、77年には劇場版も公開された。

 さらに人気に火を付けたのは、翌年公開の映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」。劇場には徹夜で行列をつくる人たちも現れ、観客動員数は400万人を突破、この年の邦画第2位を記録した。

 アニメ特撮研究家の氷川竜介さん(59)は「『さらば−』はアニメ界の大きな転換点になった」と振り返る。大ヒットの理由を、激闘の末にヤマトに1人残った古代が巨大な敵に体当たりを試みるラストシーンに求める。「悲劇的な結末で、ヤマトシリーズの完結だと思われた」と説明する。

 ところが、同年には古代たちが生き残る別の結末を描いたテレビシリーズ「ヤマト2」が放映。さらに「ヤマト3(ローマ数字の3)」、映画「完結編」と作られるが、衝撃的な「さらば−」を超えることはなく、アニメファンも次第に離れていった。

 「さらば−」以前に原点回帰するリメークの企画が具体的に動きだしたのは、一連のシリーズでプロデューサーを務めた西崎義展さん=享年(75)=が亡くなった2010年以降。養子の彰司さん(64)が語る。「話題性は薄れていたが、劇場版(第1作)のストーリーは最高に面白いと思っていたし、リメークして時間の空白を埋め、もう一度ファンに届けたいと思った」

 第1作をリメークした「ヤマト2199」(全7章)は12年から劇場で順次公開された後、翌年にはテレビ放映。彰司さんと企画を進めた毎日放送(大阪)の竹田青滋さん(57)は「ヤマトは中学生のころに熱狂し、ノスタルジーのある作品。9・11のテロもあり、現代風にして21世紀の世にもう一度問いたい思いがあった」と明かす。

 「さらば−」をモチーフにした「ヤマト2202」(全7章)には、小説で実績のある福井さんが脚本とシリーズ構成で参加。今年2月の第一章に始まり、10月14日からは第三章「純愛篇(へん)」が公開される。彰司さんは「戦いの場面や人間ドラマを書く巧みさに、きっと骨太の作品を書いてくれると思っていた。期待にたがわぬ良い脚本ができた」と自信を見せる。氷川さんは「やはり物語に力があり、未知の新作を見るようで面白い」と高く評価する。

◆愚かしくも美しい 古代と雪 愛の選択 脚本・福井晴敏さん語る

 旧日本海軍の潜水艦を題材にした「終戦のローレライ」などのヒット作を持つ福井晴敏さんは小学生のときにヤマトに出会った。「今になってヤマトが血肉になっていたと気付いた」と語る。

 −ヤマトとの出会いは。

 小学四年生のとき、テレビで劇場版の「宇宙戦艦ヤマト」を見て驚きました。その後「さらば宇宙戦艦ヤマト」も見てラストで泣きました。

 −その作品をリメークする思いは。

 今、世界中でテロ事件が起きている。当時でさえ特攻賛美といわれた映画だが、うまくいけば、逆説として今必要なメッセージを発信できると思いました。

 −愛をテーマにした理由は。

 愛があるから人間は苦しむ。なぜ人間は愛を持たされたのか追求したい。第三章では、愛の良い面、ライト(明るい)サイドを描いています。この先のダークサイドと対になる場面です。

 −第三章では、主人公の古代が愛がある故に大きな選択を迫られますね。

 あの場面はスタッフの間でも意見が分かれて、説得するのに苦労しました。古代と(婚約者の)森雪の選択が正しいかというと正しくはない。でも、愚かしくも美しいと感じるのではないでしょうか。

 −当時の森雪が男性に従う理想的な女性だとしたら、本作は自分の意見を持つ現代風の女性のように見える。

 そうですね。時代が変われば、それに合わせて。それに当時は若いスタッフが中心だったんですけど、今回は五十代中心。男女関係について達観しているからかも。

 −物語はこれからどこへ向かいますか。

 愛のネガティブな面も含めて包み隠さず描きたい。それでも、愛がなければ人間は生きていけないことを訴えたいです。

 <ふくい・はるとし> 1968年、東京都出身。97年、警備会社に勤務しながら著した「川の深さは」が第43回江戸川乱歩賞候補に。98年「Twelve Y.O.」で同賞を受賞。「亡国の−」「終戦の−」が映画化されている。

 

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