月9は死にましぇ〜ん 30周年 123作目の新機軸

放送芸能

2017年4月16日 朝刊

 テレビ史に残る名作の数々を生み出してきたフジテレビ月曜午後九時のドラマ枠「月9(げつく)」が今月、三十周年を迎えた。若者の恋愛や流行を生き生きと描き、かつては「月曜夜には街からOLが消える」と言われるほどの社会現象になった。近年は視聴率が低迷し、打ち切りもささやかれる中、フジは節目の新作に王道のラブストーリーでなく、ミステリーを用意。復活を期す百二十三作目「貴族探偵」は十七日にスタートする。 (砂上麻子)

 「当時は少しでも視聴率が上がると現場が活気づきました」。女優で最も多い七作品に主演した中山美穂さん(47)は振り返る。「君の瞳に恋してる!」(一九八九年)を手始めに「すてきな片想い」(九〇年)、「おいしい関係」(九六年)などに主演、俳優としての人気を確たるものにした。「今でも『ドラマを見ていました』と言われることがあります。皆さんの思い出に残っているのはうれしい」とほほ笑む。

 月9第一号は、岸本加世子さん主演で八七年四月に始まった「アナウンサーぷっつん物語」。八八年の「君の瞳をタイホする!」では、おしゃれな衣装や店が話題となり「トレンディードラマ」という言葉も生まれた。

 歴代作品と時代背景を分析した「月9」(幻冬舎)を昨年十月に著した評論家の中川右介(ゆうすけ)さん(56)は「設定はうそっぽいが、登場人物の恋愛や結婚にはリアリティーがあり、当時の若者が共感できた」と魅力を語る。「自由で自立したヒロインが、やりがいのある仕事、切ない恋をし、楽しく生きる。女性が生き生きと輝いていた」

 二〇〇〇年代に入ると、木村拓哉さん(44)が型破りな検事を演じた「HERO」(〇一年)や、福山雅治さん(48)の「ガリレオ」(〇七年)など独特のキャラクターで人気の作品も出たが、視聴率では苦戦する作品も目立ち始めた。昨年一月期の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」からは五作連続で平均視聴率は二けた割れ。直近の「突然ですが、明日結婚します」は6・7%と過去最低を更新した。

 流行に詳しいマーケティングライターの牛窪恵さん(49)は、若い世代の恋愛離れがあると指摘する。「現代の若者には恋愛は面倒という意識があり、旧来型の恋愛には否定的」。牛窪さんは「恋愛というテーマ自体は悪くないが、年間四本のうち一本は新鮮な俳優や挑戦的な企画を取り入れ、より等身大の若者を描いてみては」と提案する。

 プロデューサーとして「ロングバケーション」(九六年)などを手がけた亀山千広社長(60)は、ささやかれる月9の打ち切りについて「考えていません」と否定する。その上で「萎縮しないで、見せたい、ヒットさせたいという気持ちを最優先にすると、見えてくるものがあるはず」と現場の奮起に期待する。

 「貴族探偵」のメイド役で十五年ぶりに月9に出演する中山さんは「友人から『おめでとう』と言われ、すごいことなんだ」と驚いたという。「育ててもらった月9に恩返ししたい。誰が見ても楽しい作品です」とアピールする。

◆ラブストーリーあきらめません 「貴族探偵」主演・相葉雅紀

 三十周年を飾る「貴族探偵」に主演するのは、人気グループ「嵐」の相葉雅紀さん(34)。親しみやすい等身大の役を演じることが多かった相葉さんが、執事やメイドを従え、肝心の推理は使用人任せにする一風変わった探偵に挑む。相葉さんは「新しい自分を見せたい」と意気込む。

 原作は麻耶雄嵩(まやゆたか)氏の同名推理小説。貴公子のような衣装に身を包み、謎の多いキャラクターだが、相葉さんは貴族について「会ったことも、見たこともないので想像できない」と苦笑いする。「ぴしっと背筋が伸びて、お堅いイメージしかないが、育ちの良さを醸しだしながらコミカルな感じに崩していきたい」と役作りに意欲をみせる。

 月9主演は「ようこそ、わが家へ」(一五年)に続いて二度目。羽鳥健一プロデューサーは「今回は相葉さんのかっこ良さを前面に出したい」と起用の狙いを話す。劇中では、貴族っぽく「雑事は使用人がやること」などと執事らに命令ばかりしているが、相葉さんは「本当は使用人のことが好きなんです。ご主人という立場は守りつつ、愛がある感じです」と説明する。

 節目の作品で注目を集めることについては「プレッシャーはないです。いい作品を作ることに集中している」と淡々としている。月9にはラブストーリーのイメージがあるというが、前作もラブストーリーではなかった。相葉さんは「(ラブストーリー出演は)あきらめていません。いつかきっと」と笑顔を見せた。

 昨年は紅白歌合戦の白組司会も務め、大役が続く。「後ろを振り返る時ではない。前を向いて、与えられた仕事に一つ一つ丁寧に向き合っていくだけ」。真剣な表情にトップアイドルの自信が垣間見えた。

 

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