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北村総一朗 舞台化は「使命」 新藤兼人監督作 不戦へ放つ「ふくろう」

放送芸能

2017年4月6日 紙面から

 東北地方の不毛の開拓村で生きる母と娘を通して戦争や国家への怒りを描いた新藤兼人監督(1912〜2012年)の映画「ふくろう」(04年公開)を、劇団昴(すばる)のベテラン俳優北村総一朗(81)が自ら企画し、舞台化する。半世紀を超える俳優生活で初めて演出を手掛ける北村は「きな臭い世の中になった今こそ、二度と戦争を起こしてはならないとの強い思いを伝えたい」と熱く語る。 (安田信博)

 映画の舞台は戦後、満州から命からがら引き揚げた人々が入植した「希望ケ丘開拓村」。住民たちは過酷な環境に耐えかねて次々と村を去り、母と娘だけが残される。時が過ぎ、村から母娘も姿を消し、白骨死体が見つかる…。

 新藤監督は一九七〇年代前半に青森、秋田両県にまたがる十和田湖周辺を訪れた際、開拓村が全滅した史実を知り、映画化を構想。母親役の大竹しのぶがモスクワ国際映画祭で最優秀女優賞、監督自身も特別功労賞を受賞するなど高い評価を得た。

 公開直後に映画を見た北村は「九十歳を超えてメガホンをとった監督のバイタリティー、一貫して反戦というテーマを追ってきた精神の高潔さに感銘を受けた」と明かす。「深刻なテーマを大上段に振りかぶらず、ブラックユーモアに包んで提示したことに見識も感じた」

 十歳で終戦を迎えた北村自身も空襲で親族や同級生を失った。県域の大半を林野が占める故郷高知からも“新天地”を夢見て満蒙(まんもう)開拓団に多くの人が応募した。幼少から酷寒の地で苦しむ開拓民の話を聞かされ、行方知らずになった同級生の一家もあった。終戦直前の混乱の中、性的暴行や集団自決などの悲劇が起きたことも文献で知り「広島、長崎、沖縄だけが戦争の爪痕ではない」との思いを深めたという。

 今回の舞台は劇団活性化のため、所属俳優が自由な発想で企画する自主公演シリーズの第二弾。前立腺がんの治療から昨年一月に舞台復帰した北村は「国家に二度も裏切られた母と娘の報復がこの作品の大きなテーマ。今やることが自らの使命」と名乗りを上げた。

 初の演出には「優秀な先輩方から学んできたことを少しでも後輩たちに伝えられれば…。若者と一緒に舞台をつくり上げる作業は大きな刺激になります」。

 公演は十七〜二十三日、東京・板橋のPit昴。問い合わせは、(電)080・9580・4217。

<きたむら・そういちろう> 1935年、高知市出身。文学座、劇団雲を経て劇団昴所属。「踊る大捜査線」シリーズなど多くのテレビドラマ、映画でも活躍している。

 

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