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スルガ銀手法 業界むしばむ 不動産会社と裏でつながり暴走

経済

2018年9月8日 朝刊

記者会見するスルガ銀行の有国三知男新社長=7日、静岡県沼津市で

 シェアハウスへの不正融資にのめり込んだスルガ銀行を、外部弁護士の第三者委員会が断罪した。不動産会社と裏でつながり、高額物件を会社員らに買わせる手法は「スルガスキーム」と呼ばれ、業界にまん延しているとのうわさもくすぶる。超低金利で膨らんだ不動産投資バブルは崩壊への道をたどり始めた。 

 ■番頭急逝

 不適切融資の主舞台となった横浜東口支店。麻生治雄元専務執行役員が稟議(りんぎ)書に目を通す毎週水曜日は、販売協力会社が出入りし、深夜までごった返した。審査書類の改ざんに手を染めた協力会社の社員は「びくびくして待つが、融資を断られることはなかった」と明かす。審査部門は麻生氏が率いる営業部門にどう喝され、ほぼ100%承認した。

 スルガ銀は住宅ローンの競争激化を背景に二〇〇〇年代後半、ワンルームマンション投資への融資を拡大。恋愛感情を利用したデート商法による詐欺が横行してブームが下火になると、アパートやシェアハウスへと軸足を移した。協力会社には「デート商法で問題になった顔ぶれのダミー会社が紛れ込んでいた」(第三者委関係者)が、営業部門は黙認していた。

 営業を重視し法令順守を軽視する風土を作り上げたのは、岡野光喜会長の実弟で番頭役だった喜之助副社長と、第三者委の報告書は認定した。その喜之助氏も一五年には見かねてシェアハウス関連取引を禁じたが、麻生氏らは無視。喜之助氏が翌年急逝するとたがが外れ、暴走に拍車が掛かった。

 ■「卒業」

 一九八五年にトップを世襲した光喜氏は、個人向け融資にかじを切り「地銀の風雲児」と呼ばれ、社内では「聖域化」した。近年は過去最高益を更新し続けたが、取締役会は事業計画を営業部門に任せきりだった。第三者委は、不正融資の根底には「意図的と評価されてもやむを得ない放任や許容があった」と指摘した。

 「コンシェルジュ」「夢先案内人」。スルガ銀が掲げた経営理念は、任期が異例の三年に及んだ金融庁の森信親前長官が唱えた「顧客本位の経営」を体現するかのようだった。だが、営業部門は「崇高な目標を掲げられても飯は食えない」と冷ややかだった。執行役員から取締役に昇格することは第一線から退く意も込めて「卒業」と呼ばれ、金融庁幹部は「企業統治が軽んじられていた証左だ」と切って捨てた。

 ■サブプライム

 「もう暴かないでくれ」。問題を追及する弁護士には不動産業界から圧力とも受け取れる声が強まり始めている。日銀の統計では、国内銀行が今年四〜六月期に個人の貸家業向けに新規融資した額は五千六百三億円と、ピークだった一六年七〜九月期から半減した。今回の件を受けて融資引き締めの動きが広がり、不動産業界は青息吐息だ。

 スルガ銀は過剰融資のつけが回り、今年六月末の不良債権額が前年同期の四・六倍の千三百五十六億円に膨らんだ。八月末には、投資用アパート企画・管理の「TATERU(タテル)」でも類似の審査書類改ざんが発覚した。

 問題の闇は深いとみるインターネット上では、十年前のリーマン・ショックの引き金となった不良債権になぞらえ「日本版サブプライム」とささやかれ、次の火種を探す動きも出始めている。

 

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