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人件費分配率 下落続く 企業の内部留保 最高446兆円

経済

2018年9月4日 朝刊

 財務省が三日発表した二〇一七年度の法人企業統計によると、企業の内部留保と呼ばれる「利益剰余金」は、金融・保険業を除く全産業で前年度比9・9%増の四百四十六兆四千八百四十四億円となり、過去最高となった。一方で企業が稼いだお金のうち、従業員の給与・ボーナス、福利厚生に充てられた割合を示す「労働分配率」は66・2%と前年度の67・5%から下落。企業の利益の伸びとは対照的に、賃上げが進んでいない実態をあらためて浮き彫りにした。

 内部留保は製造業が9・1%増の百五十三兆三千二百五億円、非製造業が10・4%増の二百九十三兆一千六百三十九億円で、いずれも過去最高を更新。経常利益も、これまでで最も多い八十三兆五千五百四十三億円に達した。好調な海外経済を背景に輸出を伸ばす自動車、電子部品の売り上げ増が全体を押し上げたとみられる。

 これに対し労働分配率は前年度から1・3%下がり一九七四年度以来、四十三年ぶりの低水準となった。第二次安倍政権では発足当初の二〇一二年度の72・3%をピークに、ほぼ右肩下がりを続けている。この間、生産活動を通じ企業が原材料を加工するなどして、新たに生み出した「付加価値」は約三十九兆三千七百億円増えたにもかかわらず、賃金の伸びは約九兆五千八百億円にとどまっているからだ。

 安倍晋三首相は企業に賃上げを再三要請し、政権幹部も設備投資などで内部留保をはき出すよう促してきた。一部には改善した経済指標もあるが、法人企業統計の結果からは、十分な効果が上がっていると言い難い。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの鈴木明彦氏は「賃上げは本来、企業が決める話。政府に言われたからといって、経済界が素直に受け入れるものではない」と述べ、政策の限界を指摘。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「トランプ米大統領の保護貿易政策もあって、企業の行動は慎重になっている。今は労働分配率を高めるより内部留保を積み上げることで安心感を得たいのだろう」と解説した。 (生島章弘)

<労働分配率> 生産活動などを通じて企業が生み出した付加価値のうち、従業員の給与・ボーナス、福利厚生などの形で労働者に配分された割合。国全体でみると、国民所得に占める雇用者報酬の比率などで示される。企業の稼ぎがどれだけ働く人に人件費として回ったかを測る目安となる。

 

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