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ルールころころ 学生翻弄 就活指針「廃止」か 中小採用難しく

経済

2018年9月4日 朝刊

 財界トップの中西宏明経団連会長から、就活ルール廃止の爆弾発言が飛び出した。二〇二〇年は東京五輪・パラリンピックとかち合い、会社説明会の会場不足が懸念されることも廃止論を後押しする。だが、採用活動が自由化されれば、優秀な学生を早く獲得したい企業の競争激化は確実。ルール変更に翻弄(ほんろう)されてきた学生は、またしても置き去りにされそうだ。

▽企業の意向優先?

 「日程だけの議論をすることはやめたい」。中西氏は記者会見で、経団連に就活ルールを設定する責任があることに以前から疑問を感じていたと明かした。今年三月、経団連の榊原定征前会長は「勝手にやり放題では問題がある」とルールの意義を強調していたが、方向転換した形だ。

 中西氏は、一七年卒の学生から適用してきた現在のルールを、二一年に卒業する今の大学二年生の就職活動から廃止したい考えだ。しかし、安倍晋三首相は東京都内での会合で「企業側はルールをしっかり守っていただきたい」とけん制。安倍氏の言葉には、政権にとって物分かりが良かった前会長時代と異なり、おもねることなく堂々と持論を展開する中西氏への不快感ものぞく。

 経団連は一六年卒業生の就活で、会社説明会の解禁を三年生の十二月から翌年三月に、面接を大学四年生の四月から八月にそれぞれ遅らせた。安倍政権の働き掛けもあり、学業を優先させる姿勢を示すのが狙いだった。

 しかし、先に入社が決まっていた中小企業の内定を辞退し、大手企業に乗り換える学生が相次ぎ、企業側では水面下で実質的な採用活動を進める動きが目立った。そこで、一七年卒では面接解禁を六月に早めたが、学生の混乱は一段と深まった。

▽後輩かわいそう

 近年、優秀な学生の中では外資系企業を目指す人も多く、国内企業では、就活ルールの枠外にある外資系企業との採用競争が熾烈(しれつ)になっている。通年採用も拡大し、中西氏のルール廃止提案を歓迎する企業は多い。

 三菱ケミカルホールディングスは「以前から、新卒一括採用にこだわらず、通年採用を検討すべきだと考えていた。当社では、通年採用をできるだけ早く開始すべく検討を始めている」と就活ルール廃止を前向きに捉えるコメントを出した。

 大手銀行関係者も、経団連に加盟せず自由に採用している企業と「同条件で競争でき、優秀な人材の確保につながる可能性はある」と話す。

 しかし、採用コンサルタントの谷出正直(たにでまさなお)さんは「ルール廃止となれば、(内定を出す時期など)大手企業から中小企業という流れの日程のすみ分けがなくなる。学生に人気の大手が通年採用に乗り出せば、中小は採用がますます難しくなる」と懸念を隠さない。

 携帯電話会社に内定した早稲田大四年の女子学生(21)は「就活日程に区切りがあるから三年生の秋までサークル活動に打ち込めた。もしルールがなくなると、後輩たちはやりたいことができなくなり、かわいそうだ」と嘆いた。

 

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