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米中貿易摩擦 各国に不安広がる

経済

2018年7月7日 朝刊

米中貿易摩擦を懸念する富士セイラの工場=6日、東京都大田区で

 米国と中国が六日、それぞれ制裁関税と報復関税導入に踏み切った。日本企業にとっても対岸の火事ではなく、国内の賃金に響く可能性も。各国経済の現場に不安がのしかかっている。 (矢野修平、ワシントン・白石亘、上海・浅井正智)

◆日、米中の共倒れを警戒

 「どこから影響が出てくるか、まったく読めない」。ねじなどを製造する富士セイラ(東京都品川区)の高須俊行社長(51)は困惑する。

 従業員約百人の同社だが、中国工場で現地の家電や産業機器メーカー向けに精密部品を生産する。自社の部品が組み込まれた製品が「米国の制裁品目に含まれる可能性がある」。

 日本メーカーは中小に至るまで国境を越えて工場を展開。中国には多くのメーカーが工場を設けており、米中摩擦は対岸の火事でない。

 事務機器大手の富士ゼロックスは、コピー機向け消耗品などが、制裁品目に含まれていた。同社広報は「必要があれば、他の国へ生産の一部を移管することも検討したい」と話す。

 半導体検査装置を手掛けるアドバンテストは日本から検査装置を中国の半導体メーカーへ輸出している。同社広報は「半導体の生産が中国から米国に移るだけであれば、輸出先を移せば良い。しかし勝者なき『戦争』で米中の需要が共倒れすれば心配だ」と警戒する。

 中国向け輸出や現地生産が減少すれば、日本国内の収益や賃金にも影響する。不安の連鎖から企業が設備投資を抑制すれば日本の景気全体が冷え込む恐れもある。

◆米、矢面の業界から悲鳴

 「さらに二千億ドル(二十二兆円)、そしてもう三千億ドル追加する用意がある」。対中関税の発動を控えたトランプ米大統領は五日、遊説先に向かう機中で中国からの全輸入品の五十五兆円超を対象にする可能性を示唆した。

 だが、矢面に立つ米企業からは悲鳴が上がる。ビートルズら著名ミュージシャンが愛したシンセサイザー製造の米モーグ社。部品は中国からの輸入に頼っている。同社は顧客宛てメールで「楽器の製造コストはすぐに急激に上がり、従業員を解雇する可能性が高い」と説明。「最悪、生産の一部を海外に移すことになる」といい、国内産業を守るはずのトランプ関税は一部企業の「国外逃避」を招く可能性も出ている。

 全米商工会議所は、各国からの報復関税による経済損失を各州ごとにホームページ上で公開。三百万社の会員企業に、抗議メールを米議会に送るよう訴えている。

◆中、進出日系企業も影響

 米国の制裁関税は中国企業だけでなく、中国に進出した日系企業にも影響を及ぼす。

 「注文生産型のうちの製品は、米企業には代替品はつくれない。生産が落ち込むという想定はしていない」。上海市内にある森松集団(中国)の真田和明副総経理は、制裁発動を冷静に受け止める。

 親会社であるステンレス製タンクの国内最大手、森松工業(岐阜県本巣市)は米国向けプラント機器輸出で年間三十億〜五十億円売り上げる。それが制裁対象になるというが「米国の製造業は衰退している。すぐに復活などできない」とみる。

 だが、「景気が後退し設備投資が落ち込めば、プラント機器の需要に影響が出てくる」と懸念する。

 上海にある日系大手電子部品メーカーはコンデンサーやトランスなどが制裁対象。総経理は「米国に代替品がない強みがある。米国のお客さんは、追加関税分が上乗せされたものを買うことになる」と米国の消費者にしわ寄せが行くとの見方を示した。

 

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