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「端っこ」からの戦い方

考える広場

2018年3月3日

 「マイナー」「辺境」「人気薄」−。そんな逆境もものかは、「端っこ」から「中心」を目指して頑張る人や地域がある。努力の源は何か。どうやってメジャーにのし上がっていったのか。それをどう分析するか。

◆一番自由な立ち位置 SKE48チームEリーダー・須田亜香里さん

 正規メンバーに昇格した時、与えられた場所は十六人のチームで最後列の端っこでした。卒業メンバーの後に入ったのですが、そのポジションによる公演が三年半も続き、端っこに居続けることになりました。シングル曲のメンバーにも、すぐには選ばれませんでした。

 今思うと、協調性が欠けていました。前に立つことを周りに認めてもらえる人ではなかった。当時は分からないから、人気があれば文句なく前に立てるだろうと考えました。ファンを増やすために、周りが100%やっているときに目に見える形で120%やろうと。ステージでは、端っこにいるのになぜか目がいくパフォーマンスを心がけました。どうやれば隙間から気づいてもらえるかを考えて。いつ、誰が見ているか分からないので、一瞬も気を抜かず。

 隙間のインパクトって強いんです。目立つことをやれば、前にいるよりも気になる存在になれる。「後ろなのにちゃんとやってるね」って。端っこは、追いやられているように見えて一番自由にできる場所でもあります。周りを気にせず動けるから。どうやって端からはみ出せるかを考えましたね。

 後ろにいると、ほかのメンバーの様子も俯瞰(ふかん)で見えてきます。グループで一緒にやるときに、どんなメンバーならやりやすいか。選ばれる人と選ばれない人の差は何か。それに、端っこに立った人の方が、いろんな人の味方になれるし、逆に自分の味方にもなってもらえる。

 そうやって努力して、AKB選抜総選挙で初めて上位十六人の選抜に入った時、ファンの方が私を「瞳の中のセンター」にしてくださったと申し上げました。端っこだけど、ファンの方の中では私がセンターだと。前の位置を取ろうと努力した結果、手に入れた言葉です。「瞳の中のセンター」だから、後ろでマイペースにやればいいということでは絶対ない。自分を甘やかす言葉ではないんです。

 序列にこだわらず、オンリーワンの存在を目指せという意見もあります。でも、ここで一番を目指さない人は、ほかの場所でも活躍は無理だと思っています。私の場合、粘り強さ、がむしゃら感といった自分らしさは、ナンバーワンを追求した結果、見つけられたんです。だからこそ言いたい。今年のAKB選抜総選挙では一位を目指します。

 (聞き手・大森雅弥)

 <すだ・あかり> 1991年、愛知県生まれ。2009年にSKE48加入。昨年のAKB選抜総選挙で6位。メ〜テレ「ドデスカ!」コメンテーターなどで活躍中。著書『コンプレックス力』も話題。

◆最下位をPR効果に 茨城県広報広聴課長・根崎良文さん

 ブランド総合研究所の行った都道府県別の魅力度ランキングで、茨城県は五年連続で最下位になっています。正直、じくじたる思いがあります。

 なぜ、最下位なのか。著名な観光地が少なく、自慢することを美徳としない県民性のためかと私なりに分析しています。県政の発展も特有なものがあり、他の都道府県を目標とせず、まねもしない。売り込みも上手とはいえず、農業で言えば、とれた分だけ売れるので、ブランド化もこれからが勝負どころ。

 最下位だからといって悲観していません。魅力度はたくさんある指標の中の一つで、茨城がランキングの上位に入るものもあります。農業産出額は二位、可住地面積は四位、一住宅あたりの敷地面積は一位です。こういったものの中から、本県の良さを伝えていければいいと思っています。ナンバーワンではなく、オンリーワンを目指しているというところでしょうか。

 ですから、魅力度最下位については、結果を真摯(しんし)に受け止めつつ、もっと大きく構えて、逆にこれがPR効果につながれば、という気持ちでいます。もちろん、一部には四十六位よりは注目を浴びるので「おいしい」との声もありますが、最下位が喜ばしいはずがありません。

 県としては今後、観光の誘客、農林水産物のブランド化、企業誘致の三点に絞ってプロモーション活動を強化します。また、「住みよさランキング」の調査では、百位以内に六市がランクインしていますので、もっと住みやすさをアピールできないかとも考えています。

 人は、水が豊富で平らなところに集まるものです。茨城は七割が平地で、どこにでも住めます。そして、住宅は広い。野菜は豊富にとれて安く、同時に所得は高い。スタイルに合った人にはとても住みやすいと思います。

 ポテンシャルはあるわけですから、いかに生かしていくかがこれからの勝負です。キーポイントは「気付き」だと思います。住んでいたら良さは当たり前で気付きにくいものです。魅力度最下位と言われれば第一印象は良くないですが、それで関心を持たれるのはいいこと。そこから深掘りし、「気付いて」もらえればいい。県外の方からは「本当に最下位?」、県民からは「そんなことはない」、そう言ってもらえればいい。

 (聞き手・水谷エリナ)

 <ねさき・よしぶみ> 1962年、茨城県生まれ。茨城大卒。86年に入庁後、総合計画策定、市町村合併、茨城空港開港、新エネルギー導入などに携わる。2017年4月から現職。

 <魅力度ランキング> 同種調査は他にも。名古屋市が国内8都市で調べると「買い物や遊びで訪問したい先」の指数が、京都37・6、札幌36・6、横浜28・9に対し、名古屋は1・4と大差の最下位だった。

◆衰退局面を直視して 思想家・内田樹さん

 日本人固有の思考や行動は、その辺境性によって説明できるという『日本辺境論』を、十年近く前に書きました。歴史的にみると、日本は中華帝国の東の辺境でした。しかし、漢民族は「華夷(かい)秩序」を守っている限り、日本列島を実効支配しようとはしなかった。今の日本は米国の東の辺境にありますが、この大国は属国に軍を常駐させ、市場をこじ開け、不平等条約を強要している。韓国やフィリピンも米国の同盟国ですが、基地問題や地位協定では要求すべきものは要求し、米国の譲歩を引き出しています。何の抵抗もせず従属一筋なのは日本だけです。

 いま日本で起きている社会問題の大半は、国があらわに衰退局面にあることから来ています。人口は減少し、政治家はビジョンを提示できず、「ものづくり」の力も衰退し、学術的発信力は先進国最低レベルにまで劣化しています。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という松浦静山(江戸時代後期の平戸藩主)の言葉のように、敗北には原因があります。だから、敗退局面でこそ慌てず、騒がず、衆知を集めて、被害を最小化するための「後退戦」の適切な方策を講じなければならない。まずは過去四半世紀の失敗を認め、原因を分析し、次の手だてを考える。

 ところが日本人はその切り替えができない。敗退局面で「どうやって被害を最小化するか」と考える人間は「敗北主義者」と呼ばれ、「おまえたちの悲観論が敗北を呼び込むのだ」と激しく攻撃される。だから、この期に及んでなお五輪とか万博とかカジノとかリニア新幹線とかいう「起死回生の大博打(ばくち)」で劣勢を回復しようとする底の抜けた楽観論が幅を利かせる。大日本帝国戦争指導部の戦争末期の思考停止と驚くほど似ています。

 国力が頂点を過ぎたとはいえ、日本の持つ資源は世界有数の厚みと深みを持つものです。それをどう使い延ばして、全国民が幸福に暮らせるかを考えるのがなすべき第一のことです。国際関係では、地政学的利害を共にする韓国、台湾との「合従」的連携を基礎に、中国、米国、ロシアなどの大国の介入に対抗するのが現実的な政策だと私は思っています。人口減と低成長の時代に最適化した社会システムの設計は過去に成功事例がありません。誰も正解を教えてくれない。知力と想像力を挙げて自力で構築するしかありません。

 (聞き手・出田阿生)

 <うちだ・たつる> 1950年、東京都生まれ。神戸女学院大名誉教授。『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など著書多数。近著に『アジア辺境論 これが日本の生きる道』(共著)『街場の天皇論』。

 

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