XMenu

床面積2割減どまり 新国立競技場デザイン維持

ニュース

2013年11月17日

 二〇二〇年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)が巨大すぎると指摘される問題で、見直しを進める日本スポーツ振興センター(JSC)が、最終的な延べ床面積の削減を全体の約二割にとどめる方針であることが、同センターの関係者の話で分かった。それでもロンドンやアテネ五輪の二倍前後の特大サイズになり、明治神宮外苑の美観への影響は避けられないため、さらに論議を呼びそうだ。

 建設計画をめぐっては、建築家の槇文彦さん(85)ら百人の識者が修正を求める要望書を文部科学省やJSCなどに提出。作家の森まゆみさん(59)らも景観の保存を求める活動を始めている。

 しかし、英国人建築家ザハ・ハディドさんの斬新なデザインがネックとなり、高さを大幅に下げるなどの抜本見直しは、現段階で見送られる見通しだ。

 JSC関係者は「建設費は原則として延べ床面積に応じて決まるため、(建設費を削減するには)面積を減らす必要があった。スケジュールを考えるとデザインの再検討は不可能で、これがギリギリの数字」と述べた。

 JSC関係者によると、八万人の収容人員は維持する方針。一二年のロンドン五輪も八万席だったが、六割以上を後で取り外せる仮設席とした。槇さんらも一部仮設とするよう提案していたが、開閉式屋根のある今のデザインでは設置が難しくコストの削減効果は乏しいとして、計画通りすべて常設席にする。競技場上部の立体通路は簡素化する。

 「ホスピタリティー(おもてなし)機能」として重視するVIP・個室席や、スポーツ博物館・商業施設、地下駐車場などはいずれも残し、それぞれの面積を少しずつ削減。立地面積は幅、奥行きともに縮減する。

 修正により、最大で三千億円に膨らむ可能性があった総事業費は約千八百億円となる見通し。このうち周辺整備費をのぞいた競技場本体の建設費は千四百億円前後で、当初計画の千三百億円を百億円前後上回りそうだ。

 JSCは、見直し結果を十一月中にも新競技場のあり方を議論する有識者会議に報告する方針という。

◆総事業費なお1800億円 抜本解決には程遠い

<解説> 巨大すぎる新国立競技場の建設計画見直しは、抜本的解決には程遠く、小手先の修正といわざるを得ない。

 建築家の槇文彦さんをはじめ、多くの人たちが景観の問題にこだわるのは、立地する明治神宮外苑が東京を代表する歴史的な風致地区だからだ。今、外苑中心部に三百メートル続くイチョウ並木から周辺を眺めても、高層ビルは視界に入らない。この景観は大正以来、百年近く守られてきた。

 それをわずか十七日間の祭典のために、私たちの世代で壊してもよいのか。修正案は、その大きな疑問への回答になっていない。

 JSC側の説明通りなら、関連施設も含めて最大三千億円にのぼった事業費は約千八百億円程度(うち競技場本体の建設費約千四百億円)に圧縮されそうだ。それでも本体の建設費は、ロンドン五輪時の倍かかる。

 五輪後の維持費の問題もある。開閉式の屋根など施設のメンテナンス費は、将来、建設費と同じくらいかかるともいわれる。そうした費用は結局、私たちに跳ね返ってくる。

 特大サイズの建設計画や費用がかかるデザインが採用された詳しい経緯は公表されず、検証もできない。

 JSCや国はスケジュールの問題から「抜本的な対応は不可能」との立場だが、一連の課題を解消しないままの見切り発車は許されるものではない。(森本智之)

 

この記事を印刷する