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ダイヤに目がくらむ

私説・論説室から

2018年9月5日

 ある学会の取材で、展示ブースをのぞいたときのことだ。学生時代の友人がそこに立っていた。四十年ぶりだったが、昔と変わらない笑顔だった。彼の前にはダイヤモンドがいくつも並んでいた。

 入舩(いりふね)徹男君。愛媛大特別栄誉教授で、同大地球深部ダイナミクス研究センター長を務める。ダイヤよりも硬い人工ダイヤ「ヒメダイヤ」作成などの業績で知られる。

 研究テーマは地球の内部構造を探ることで、深部でしかできないダイヤは「地底からの美しい手紙」という。もちろん、世界最初の人工雪を作った中谷宇吉郎博士の「雪は天から送られた手紙である」を踏まえての言葉で、なかなかしゃれっけがある。

 ヒメダイヤはオレンジ色。入舩君は「みかん色」という。ミカンは大学の地元、愛媛県の特産品なのでヒメダイヤと名付けた。ヒメを接頭辞に使うと、かわいらしいイメージがある。しゃれたネーミングだ。

 道後温泉に「愛媛県産ダイヤモンド、入荷しました」なんてのぼりが出たら、おもしろいと思うのだが、商品化の予定はないらしい。地方創生というけれど、それぞれの地域に「お宝」があるのではないだろうか。

 彼の夢は別のところにある。日本では地球深部に達するマントル掘削計画が進行中だ。「掘削ドリルの先端にヒメダイヤが採用されること」が夢だという。 (井上能行)

 

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