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W杯優勝で見える仏社会

私説・論説室から

2018年8月6日

 ここ数年は自分自身への投資という意味を込め、欧州各地のスポーツ施設を巡っている。今年は七月上旬に早めの夏休みをとり、二〇二四年オリンピック・パラリンピックの開催地であるパリの準備状況を確かめようと思って訪れたら、サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会でフランスが大躍進している真っ最中だった。パリの街はサッカー熱であふれ返り、五輪どころではなかった。

 二十年ぶりの優勝を遂げた瞬間の喧噪(けんそう)ぶりは、報道の通り。ただ、その中から現在のフランス社会が置かれている状況も見えてくる。一九九八年は地元開催での優勝ということもあって沸き返ったが、今回は相次ぐテロや難民・移民問題、若者の失業率の高さなど、さまざまな不安や不満が渦巻く中での快挙だった。それらを一時でも忘れさせてくれた今回のチームは、前回優勝チームに勝るとも劣らない英雄的な存在となった。

 九八年大会のメインスタジアムで、現在も代表チームが試合を行うフランス競技場は、パリ北部郊外のサンドニ地区にある。仏サッカーの聖地でありながら貧困層のアフリカ系移民が多く住み、犯罪発生率が高いとされる地区だが、二四年五輪ではメイン会場となり、選手村などの建設が予定されている。五輪を地区再興のきっかけとする計画は、W杯優勝で拍車が一層かかるだろう。六年後にまた訪れてみたい。 (鈴木遍理)

 

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