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夕張学〜人間復興の試み

私説・論説室から

2018年7月16日

 二〇〇六年に財政破綻した北海道夕張市に学ぶ「夕張学会」が立ち上がった。老いて縮みゆくニッポン。その先端の地で、新しい豊かさやコミュニティーを創り出す試みだ。

 働く障害者の姿を追う季刊誌「コトノネ」編集長の里見喜久夫さんと、夕張再生の前線に立つ市職員の佐藤学さん、障害者スポーツを支えるNPO法人「あ・りーさだ」代表理事の正木英之さんら。同誌で取り上げた夕張特集が頭の柔らかい面々を結びつけた。

 炭鉱の町が衰退した背景には、石炭から石油への国のエネルギー政策の転換と相次ぐ重大事故があった。観光の町への切り替えに失敗し、三百五十三億円の負債を抱えて破綻した。完済まで残る借金は二百八億円。

 一九六〇年に十一万七千人だった人口は今や八千人余り。高齢化率49%、障害者率13%はともに全国平均の二倍前後。四十年後の日本の人口ピラミッド構造を映すとされる夕張で、互いに支え合う社会を実現できるか。

 里見さんは「高齢者、障害者という区分けのない町を自分たちの手で」と楽しそう。行政頼みが破綻を招いた。その歴史を知り、住民本位の自治を取り戻す実践でもある。

 英経済学者シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」を思い出す。第一次石油危機と同時期に、富の極大化をめざす競争と成長は、人間性を損ねると批判した。夕張学はその復興を予感させる。 (大西隆)

 

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