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「今は昔」の話ではない

私説・論説室から

2018年6月25日

 記録文書が改ざんされ、隠蔽(いんぺい)されていた安倍政権の「森友」「加計」問題。類することは昔もあった。

 徳川家康にとって、浜松市の「三方ケ原の戦い」は大きな屈辱だった。

 上洛(じょうらく)途上の武田信玄軍に攻撃を仕掛けたが蹴散らされ、ほうほうの体で浜松城に逃げ帰った。日本記者クラブで会見した歴史学者の磯田道史さんによると、武田勢は江戸初期の史料では二万人だったのが、江戸後期では四万人に膨れ上がっていた。少ない人数に負けたのでは、家康の威光が傷つく。それを恐れて史料が改ざんされた疑いがあるという。

 徳川への織田信長の援軍も江戸時代の文書では三千人とされるが、武田側などの史料によると二万人いた可能性もあるという。十分な援軍を受けながら負けたのでは、やはり格好がつかないというわけだ。

 残念だが、歴史の真実は、勝者や権力者側によってねじ曲げられ得る。

 江戸時代とは違い、議会があり、民主主義制度を取り入れているはずの今でも、改ざんが繰り返されるのは、制度がきちんと機能していないためだろう。

 ゆがめられた真実が歴史として伝わってしまう。いや、後世の検証を待っている余裕などない。目の前のアンフェアを正すため、民主主義の機能を取り戻すことは急務だ。今は江戸の昔ではない。(熊倉逸男)

 

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