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働き手不在の働き方改革

私説・論説室から

2018年6月13日

 初めて会ったのは、もう二十年近く前。シンクタンクの夏のセミナーだった。若手実業家は講演で自らのビジネス構想を語った。

 「ネット上に仮想商店街、ショッピングモールをつくる。出店者を募り、こちらには出店料と売り上げに応じた手数料が入る…」

 当時は全く理解できなかったが、それは巨万の富が集まる錬金術の始まりだった。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長。ネット通販サイト「楽天市場」の成功を足がかりに、旅行サイトやカードローン、プロスポーツなど次々と事業を拡大。最近はサッカー界の至宝、イニエスタ選手を総額百億円規模の超大型契約で獲得し、世界中の耳目を集めた。

 楽天やアマゾン、フェイスブック、グーグルなどはプラットフォーマーと呼ばれる。顧客と企業の仲介となるプラットフォーム(基盤)を提供し、そこから利益を得るからだ。いわば「胴元」であり大儲(もう)けの秘密である。

 だが胴元の中には問題ありの業界がある。クラウドソーシングの類(たぐい)だ。そこでは不特定多数がさまざまな仕事を請け負うが、労働者を守る規制は無いに等しい。中間搾取など労働者を犠牲に儲けているとの批判もある。

 そんなクラウドソーシングなのに、政府の働き方改革は「柔軟な働き方」と奨励する。アベノミクスの成長戦略にこれといった成果がないため、成長産業ほしさなのだろうが、これのどこが働き方改革なのか。 (久原穏)

 

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