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#MeToo余話

私説・論説室から

2018年4月30日

 財務次官のセクハラ問題が起きてから心身の不調を訴える女性が少なくない。過去のつらい経験を思い出すからだ。そんな中で性暴力問題に取り組むグループから、メディアで働く女性たちの被害を調べるための匿名アンケートに協力してほしいと求められた。

 日ごろは取材する側にいる自分が今は尋ねられる側にいる。記者になって二十五年を思い出しながら答える。チェックボックスに印をつけるだけの簡単な調査なのに気が重くなる。被害はずっと前。一見華やかなメディアの職場にも愕然(がくぜん)とする現実がある。話したくないことを思い出すのはこんな気持ちになるのかと気づかされる。一方で私の小さな回答が社会を変えていくために役立てられるならと願いのような思いも。「ありがとう」。アンケートをする人たちにお礼を言いたかった。

 こうして社会から関心を持ってもらえる私たちはまだ恵まれているのだと思う。「はめられた」という麻生太郎財務相らの発言は、政府の掲げる「女性が輝く社会」が、いかに陳腐で空虚なものかを白日の下にさらした。

 セクハラは立場の強い者が立場の弱い者に対して行う加害であり、それは至るところに存在する。我慢を強いられ、顧みられることもなく、声をあげたくてもあげられない人がたくさんいる。次官の問題はそこにまで光を照らすものでなくては、また忘れ去られる。それでは意味がない。 (佐藤直子)

 

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