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真珠湾、もう一つの現実

私説・論説室から

2017年10月4日

 パールハーバー(真珠湾)。米国ハワイ州オアフ島の州都ホノルルの西にあるその入り江は、七十六年前、日本軍が米太平洋艦隊と海軍基地に対して先制攻撃を仕掛け、太平洋戦争開戦の地となった。

 先月、この地を初めて訪れ、「プウロア(長い丘)」というハワイの地名があることを知った。十九世紀末、太平洋の軍事拠点として併合されるまで、真珠貝が採れた。「プウロア」と響きが似た「パール」という英語の地名は、こうした土地柄に由来している。

 「でもハワイ人にとってここは『プウロア』。『パールハーバー』とは呼ばない」。案内してくれたハワイ大学教員のキム・コンポクさん(46)が言う。米海軍戦争記念館の展示も米国と日本との戦争の経過が中心で、先住民であるハワイ人の視点はみられなかった。

 近くのビーチに行くと不意に銃声がした。「パンパン、パパパパッ」。隣は米軍の射撃演習場だった。サンゴの海で軍事演習が行われている沖縄・辺野古の光景が重なる。

 米軍施設が集中し、それが雇用を支えているという葛藤を抱えながら、ハワイにも反基地運動がある。現状を肯定する声だけではない。「基地は戦争につながる。難しくても基地に頼る経済構造を変えたい」。母が沖縄出身の元米軍人ピート・ドクターさん(49)は訴える。「リゾートの楽園」に隠れた現実を、プウロアという古い地名から教えられた。(佐藤直子)

 

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