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大坂なおみ選手 揺るがぬ心で勝った

社説

2018年9月11日

 大坂なおみ選手がテニスの全米オープンで優勝、四大大会のシングルスを日本勢で初めて制した。精神面の成長を助けたコーチの存在は、パワハラ問題などで揺れる日本スポーツ界にも一石を投じた。

 これがスポーツの素晴らしさだろう。大坂なおみ選手の全米オープン優勝に、そう思う。

 子供の時から全米オープンの会場に隣接する公営のコートで、ハイチ出身の米国人の父からコーチを受けて練習を重ねてきた。「セリーナ・ウィリアムズにいつかここで勝ち、全米オープンに優勝したい」という目標に向かって突き進み、二十歳の若さで夢をかなえた。

 身長180センチと恵まれた体から時速180キロ以上のサーブを打ち込む大坂選手にとって、最大の試練は「揺るがない心」をつくることだった。

 昨年までの大坂選手は試合の重圧に押しつぶされそうになり、コート上で泣き出してしまうこともあった。そんなガラスのようにもろく、繊細な心に、昨年十二月からコーチについたドイツ人のサーシャ・バイン氏は選手の視線に下りて寄り添い、逆境に立った時こそ自分を信じて我慢することの大切さを粘り強く教え続けた。

 日本は暴力やパワハラを伴う指導が次々と表面化し、スポーツが人としての尊厳を傷つけるという、誤った認識さえ抱きかねない状況。今回の快挙はコーチの本来あるべき姿を示したことでも、意義あるものとなった。

 対照的に、スタンドのコーチから試合中にアドバイスを受けたとして警告を受けたセリーナ選手は、この判定に抗議を繰り返した揚げ句にラケットをたたきつけて壊すなど、あるまじき行為をしたことは残念だった。

 ただ、ペナルティーを覚悟で涙ながらに「私は人生でずるいことをしたことはない。謝罪してほしい」と主審に訴える姿からは、計二十三度の四大大会優勝を誇る女王としての強いプライドを感じさせ、観客のほとんどはセリーナ選手の主張を後押しするブーイングを主審に浴びせた。

 そのような異様な雰囲気にも心を乱さなかった大坂選手の精神力に感服するとともに、試合後は勝者をたたえたセリーナ選手にも敬意を表したい。世界中の選手から目標とされる立場となった大坂選手には、新たな壁が心にも体にも今後立ちはだかるだろう。それらを乗り越え、これからもさわやかな活躍を見せてほしい。

 

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