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防衛費の要求 危うい歯止めなき膨張

社説

2018年9月6日

 安倍政権下で防衛費の膨張に歯止めがかからない状態だ。防衛省の二〇一九年度概算要求は五年連続で過去最大に。情勢の厳しさを理由とするが、防衛費を増やすために緊張を煽(あお)るべきではない。

 防衛省の一九年度予算概算要求は一八年度当初予算比2・1%増の五兆二千九百八十六億円となった。米軍再編関係経費などは含んでおらず、一八年度と同額の二千二百十一億円を計上した場合の実質的な前年度比は6・3%増となる。厳しい財政事情の下、異例とも言える増額要求である。

 日本の防衛費は冷戦終結後、減少傾向が続いていたが、安倍晋三首相が政権復帰後に編成した一三年度に増額に転じ、概算要求は一九年度まで七年連続の増額だ。

 政府は「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と、それに基づく「中期防衛力整備計画(中期防)」の年内改定に向けた作業を進める。

 現行の防衛大綱は一四年度から十年間程度を念頭に、安全保障や防衛力整備の基本方針を示しており、別表で自衛隊の人員・体制や主要装備品の整備目標を定める。

 一四年度から一八年度まで五年間の防衛費の総額を二十三兆九千七百億円程度と定めた現行の中期防では、防衛費の伸びはおおよそ年0・8%だ。実質6・3%という大幅な増額要求は、今後、財務省の査定で減額されるとはいえ、新しい大綱と中期防の下で防衛費を増やし続ける布石に違いない。

 首相は三日、幹部自衛官に対する訓示で「新たな防衛力の完成を十年や十五年かけて実現するようなスピード感からは、完全に脱却しなければならない」と述べた。

 これは防衛力の整備をこれまで以上に急ぐ方針を示したものにほかならない。首相の念頭には地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」やF35Aステルス戦闘機、垂直離着陸輸送機オスプレイの導入加速があるのだろう。

 米国が価格や納期の主導権を持つ「有償軍事援助(FMS)」で調達するこれらの米国製装備は高額で、すでに防衛費膨張の要因となっている。導入を急げば、防衛費は当然、跳ね上がる。

 日本の防衛政策に今、必要なことは、トランプ米政権の求めに応じて米国製の高価な武器を買い込むことではなく、真に必要な防衛力を見極めることではないか。

 日本周辺では、歩みは遅いものの緊張緩和に向けた模索が続く。中国や北朝鮮の脅威を金科玉条にして、やみくもに防衛費を増やせばいいというものではあるまい。

 

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