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経産省の公文書 国民に目隠しの発想だ

社説

2018年9月3日

 「政治家発言の記録は残すな」−経済産業省が公文書管理でこう指示していた。驚くべき事態だ。政策の意思決定過程を不透明にするやり方は、法の理念を骨抜きにし国民に目隠しするのと同義だ。

 「三月に上司から『今後は発言を一切記録に残すな』と指示された」「今後は他省庁との会合や政治家など偉い人の前では一切メモを取らないように」とも。経産省の複数の職員がこう証言した。

 実際に本紙は経産省の内部文書も入手した。そこには省内外の打ち合わせの記録について、「議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」と明記されている。

 このため省内では公文書となる打ち合わせ記録には詳しい発言内容を残さなくなったという。

 現在や将来の国民に説明する責務を全うする−。それが公文書管理法の意義であり、公文書は「国民共有の知的資源」でもある。政治家の発言は記録に残さないという同省の運用は、この法の理念に真っ向から背いている。「記録は残すな」という発想には主権者たる国民を置き去りにし、重要な情報を隠蔽(いんぺい)する意図さえうかがえる。論外である。

 しかも、森友学園や加計学園などの問題を受けて昨年十二月に改正された政府の公文書管理のガイドラインからも逸脱しているといえよう。ガイドラインでは各省内外の打ち合わせ記録は行政文書として作成するよう指示している。行政がどう意思決定したのか、その道筋をたどることができるようにするためである。

 このガイドラインに基づき、各省庁が規則を見直し、四月から運用を始めていた。ただ、保存期間などは各省庁の運用に任される部分もあり、都合の悪い文書は、作成しない、隠す、廃棄する−という悪弊が残る懸念はあった。今回はそれが明るみに出た。

 森友学園の問題ではおびただしい改ざん文書。加計学園の問題では、関係機関の協議が記録に残っておらず、真相究明が阻まれた。「総理のご意向」の文書などは怪文書扱いされた。

 こんなでたらめを直す改正が骨抜きになれば、また同じことが繰り返されよう。

 経産省は四月以降の文書について、どの政策について、どの政治家が何と言ったのか、正確に文書を作り直すべきである。発言まで記録しなければ事実の検証が十分にできない。行政のブラックボックス化はただちにやめよ。

 

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