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防災の日に考える 住民が死なない伝え方

社説

2018年9月1日

 天変地異が続きます。台風、豪雨、地震、火山…。週末は日本海側などで大雨。来週には台風21号が上陸しそうです。人が死なない防災を考えます。

 九月一日は防災の日。九十五年前の一九二三年、関東大震災が起きた日です。制定は六〇年。前年の伊勢湾台風では約五千人の犠牲者が出て、当時、戦後最大の災害でした。それまでも終戦直後の枕崎台風からカスリーン台風、洞爺丸台風と死者が千人を超える台風が相次いでいました。

 東京は世界一危険な首都といわれます。横浜や名古屋、大阪も東京と同じように地震、津波、洪水、高潮といった大災害が起きる可能性があります。

◆常識が通用しない

 河田恵昭(よしあき)・関西大特別任命教授は「戦後十五年間に及ぶ『災害特異時代』を終わらせたのは治水ダムの建設」と評価します。その一方で「洪水対策を進めれば進めるほど、川は安全になるという錯覚がある。雨が事前の計画通りに降ってくれなければどうなるのかという発想がない」と著書「日本水没」で警告しています。

 今年は異常気象です。猛暑に集中豪雨、台風。温暖化が進み、これまでの常識が通用しない気象災害が多発しています。

 西日本豪雨はその典型でした。当時を振り返ってみます。

 七月四日午前「岐阜県に大雨警報」。同日午後「西日本と東日本では八日ごろにかけて大雨となり、数日間、同じような地域で大雨が続くおそれ」。

 五日未明から愛媛県など十府県に大雨警報、同日中には八府県に土砂災害警戒情報。午後二時、気象庁は記者会見を開き「記録的な大雨となるおそれ」と注意喚起。

 六日午前十時半、気象庁は会見で「大雨特別警報を発表する可能性」。

 五日の会見は「異例」と報道されましたが、六日の大雨特別警報の予告も異例でした。

 特別警報は、発表された時点ではすでに災害が起きているかもしれない、生命の安全は保証できないという警告です。六日夕から特別警報が次々と発表されました。

◆災害情報は当たる

 かつて「天気予報は当たらない」といわれましたが、最近は違います。気象衛星ひまわりやスーパーコンピューターの利用などで精度が上がっています。予報が雨なら、傘を持って外出する人が多いのではありませんか。同じように防災気象情報も「当たる」ようになっているのです。

 気象庁は自治体とのコミュニケーションに力を入れています。地方気象台の台長は、地元の市町村長と携帯電話の番号を交換し、いざというときの連絡に使っています。今年五月には気象庁防災対応支援チームを組織し、自治体の災害対策本部へ派遣しています。

 こうした努力にもかかわらず、西日本豪雨では二百人超の犠牲者が出ました。情報を避難行動に利用してもらう工夫が必要です。

 西日本豪雨では、土砂災害警戒情報や記録的短時間大雨情報、氾濫危険情報など従来よりも詳しく情報が出ました。防災関係者には役立つのでしょうが、何が重要な情報なのか分からなかった人もいるでしょう。

 簡単なコツをお教えします。

 高齢などで避難に時間がかかる人は「避難準備・高齢者等避難開始」が出たら、できるだけ早く避難を始めてください。一般の人は「避難勧告」が出たら避難を始め、一時間半ぐらいで避難所に入ってください。「避難指示」が出てからでは、風雨が強かったり、道路が冠水していたりして困難を伴う恐れがあります。

 もう一つ、大きな気象災害が今年、注目されています。猛暑です。厚生労働省の統計では、熱中症の死者は二〇一〇年が千七百三十一人、一三年が千七十七人。死者が千人を超える大災害ですが、空調などで防げる災害でもあります。近年は死者の八割前後を六十五歳以上が占めています。

 天気の予報よりも気温の予報の方が精度が高いそうです。

◆分かりやすい一元化

 問題もあります。大雨などの際の避難勧告や指示は市町村が出す仕組みです。熱中症予防のための「暑さ指数」は環境省です。すべては気象情報が基なので、気象庁が防災情報の提供と説明を担当してはどうでしょうか。

 その際、情報の出し方も工夫してほしい。例えば、暑さでも、豪雨でも、豪雪でも、危険度を色や数字で示し、共通化してはどうでしょうか。「1」は平常通り、「2」は自治体の準備開始、「3」は住民の行動開始で統一するのです。3が出たら、住民は豪雨なら避難開始、猛暑ならエアコンのスイッチを入れる、といった具体的な行動を例示すれば、本当に役立つ情報となるでしょう。

 

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