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障害者「水増し」 解明なくして信頼なし

社説

2018年8月29日

 政府が公表した中央省庁の障害者雇用の実態には、あらためてあきれる。障害者の働く場を奪う暴挙と言わざるを得ない。共生社会の実現へ向け、実態の解明と再発防止を徹底すべきだ。

 最初に指摘しておきたい。

 中央省庁の障害者雇用の数字水増しは単なる算定ルールの認識不足ではない。障害者を働く仲間と見ていないということだ。差別ではないか。

 調査結果によると中央省庁の八割で、計三千四百六十人が不正に算入されていた。昨年雇用していたとした障害者の半数に上る。障害者雇用促進法で求められる雇用率を大幅に下回った。雇用をリードする厚生労働省もわずかながらあった。省庁ぐるみと受け取られかねない不正である。

 民間には法定雇用率に達しないと納付金を求めるのに、行政機関が報告だけで済むのは雇用の旗振り役として責任を果たしているとの前提があったからだろう。それだけに不正を放置した責任は重い。猛省すべきだ。

 なぜ不正が行われたのか。厚労省のガイドラインでは、身体障害者手帳などを持つ人などが対象だが、多くがそれに従っていなかった。ガイドラインの理解不足などという理由は通用しない。そもそも障害者を働く仲間と見ていれば、ガイドラインを確認し適材適所の雇用を考えたのではないか。

 不正が故意かどうか加藤勝信厚労相は「今、把握することは困難だ」と述べた。水増しの経緯や詳しい実態は依然、不明だ。政府には地方自治体も含め真相を究明する責任がある。

 野党各党は国会の閉会中審査を求めている。行政機関全体の不正でしかも長年続けられてきたからには、政府任せにせず国会もチェック機能を果たしてほしい。

 この問題を取り上げた本欄(八月十八日付)で大分県杵築(きつき)市の永松悟市長から聞いた話を紹介した。永松市長は精密機器メーカーの下請け企業で働く二人の知的障害者のことも紹介してくれた。

 −二人は新入社員の教育係を務める。多くの失敗を経験しているからこそ、新人が失敗しても丁寧に繰り返し教えてくれるのだそうだ。現場の管理職も必要な人材だと断言しているという。

 障害者だけでなく育児・介護中の人、高齢者など誰もが能力を生かしやりがいを感じられる職場にできるはずだ。政府は不正の再発防止は当然、その環境整備こそが重要課題だと肝に銘じるべきだ。

 

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