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防衛白書 地上イージスありきだ

社説

2018年8月29日

 今年の防衛白書は、北朝鮮の脅威は米朝首脳会談後も変わらないと記した。脅威をことさら強調することで、安倍政権が推し進めている地上イージス導入を正当化しようとしているのではないか。

 六月のシンガポールでの米朝首脳会談後、菅義偉官房長官が「日本にいつミサイルが向かってくるか分からない、安全保障上の極めて厳しい状況はかつてより緩和された」と述べた政府の公式見解と明らかに矛盾する。

 二〇一八年版防衛白書がきのう閣議に報告された。特に注目すべきは、北朝鮮に関する記述である。

 昨年の白書で、北朝鮮が発射した弾道ミサイルを「大陸間弾道ミサイル(ICBM)級」と分析した上で「新たな段階の脅威になっている」としていた認識を、今年は「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」とさらに強めた。

 米朝首脳会談後、非核化実現に向けた動きは停滞しているとはいえ、かつては敵意をあらわにしていた米朝首脳同士が、完全な非核化に向けた意思を文書の形で、明確に約束した意義は大きい。

 だからこそ日本政府も会談後、ミサイル飛来の可能性は低いと判断して迎撃部隊を撤収し、住民避難訓練も中止したのではないか。

 にもかかわらず白書はなぜ「米朝首脳会談後も北朝鮮の核・ミサイルの脅威についての基本的認識に変化はない」と強弁したのか。

 それは、脅威を認めなければ、地上配備型迎撃システム(イージス・アショア)を導入する根拠を失うからにほかならない。

 政府は米国から購入する地上イージスシステム二基を秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場に配備して日本全土をカバーする計画で、地元との調整に入っている。

 しかし、導入経費は三十年間の維持・運営費を合わせて二基で約四千六百六十四億円。ミサイル発射装置や用地取得費を含めればさらに膨れ上がる。強力な電磁波による健康被害も心配され、攻撃対象になる可能性も否定できない。緊張緩和の流れの中、白書の説明はとても納得できるものではない。

 地元の懸念を顧みず、地上イージス導入を急ぐ背景に、日本など同盟国に対して米国製武器の購入と軍事費の増額を求めるトランプ米政権への配慮があるとしたら見過ごせない。

 高額の防衛装備品を購入するために、地域情勢を政府に都合よく変えることなど許されない。情勢認識を正し、地上イージスは導入を見合わせるべきである。

 

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