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食料自給率 基礎体力が落ちていく

社説

2018年8月25日

 異常気象が世界の農地をいためつけている。疲弊し、減少する田畑、老いていく生産者。「食料安保」の必要性が高まる一方で、自給力は一向に上がらない。攻めの農業一辺倒で、いいのだろうか。

 昨年度のカロリー換算の食料自給率が、二年連続して38%にとどまった。

 国民に必要なカロリー(熱量)を国産の食料でどれだけ賄うことができるかを示す指標である。

 政府は二〇二五年度までに、45%に引き上げる目標を掲げているが、ほど遠い。

 カロリーベースの自給率は、国際指標とはいえず、あまり意味がない、農業生産額に換算すれば、主要先進国の中でも高レベル−という声もある。しかし、その生産額ベースでも、65%と2ポイント減っている。輸入が途絶えた場合の供給能力を熱量で表す食料自給力指標も、耕地面積の減少が響いて、伸び悩む。

 カロリーベースの自給率は一昨年度、六年ぶりに下落し39%を割り込んだ。“農業王国”北海道で台風の被害が相次いだことによる一時的な現象だとみられていた。だが北海道の生産が回復しても自給率は上がってこなかった。

 そこで不安視されるのが、日本農業の基礎体力。農家と農地の減少に伴う、食料生産基盤自体の弱体化の進行だ。

 今政府の農業政策は、「成長戦略」の一環としての輸出重視に強く傾いているようだ。

 「担い手」と呼ばれる若手中核農家のもとに農地を集約し、「生産性」を高めて、開放された国際市場における競争に勝ち抜こうという「攻めの農業」政策だ。

 しかし、担い手集中にも限度というものがある。

 毎年秋、中日農業賞の審査で各地を回る。受賞の対象になるような、生産力の高い担い手たちの口からも「ふるさとの田畑を守りたい。でももう限界だ」という悲鳴が漏れてくる。

 異常気象の深刻化に伴う管理の手間が、農家の疲弊に拍車をかける。夏場の除草一つをとっても想像以上の重労働。頻発する台風への備えもある。「命懸けだ」と、若手の農家も真顔で語る。

 担い手集中、攻め一辺倒では農家や農地、ひいては農業そのものの持続可能性が保てない。

 例えば、耕地面積の四割を占める狭隘(きょうあい)な中山間地の農業を、どうすれば守っていけるのか−。

 攻守のバランスがほどよくとれた農政へ、軌道修正が急がれる。

 

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